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【コロナ対策】新聞で正確な情報を!コロナとAI ビッグデータの挑戦②「接触確認アプリ 日本も採用」

    • 2020年06月29日(月)
    • いいね新聞生活

個人頼みの運用 効果は

世界各国で、スマートフォンを利用したコロナウイルス感染予防が試みられています。それらは、行動を追跡し、各種の情報を人工知能(AI)で統合しようとする中央管理型と、感染者に接触したことを通知するだけの分散型に大別されます。予防効果があるのか、個人情報をどこまで求めていいのか、さまざまな問題を抱えています。(吉田薫)

多数の導入必要 義務化する国も

日本では、新型コロナウイルス感染者に接触したかどうかがわかる接触確認アプリ「COCOA」が導入されたばかりです。グーグルとアップルが共同で作った大枠の中、各国がそれぞれの事情に合わせてシステムを作ります。プライバシーを守るため、かなり複雑です。

利用者はまず、自分のスマホにアプリを入れます。するとブルートゥースという通信機能で、身近に接触した人の「コード」が記録されるようになります。自分の「コード」も相手のスマホに記録されます。ただし個人の特定はできないようになっています。

たとえば花子と太郎が、ある時接触したとしましょう。その後、太郎がウイルスに感染したと分かった場合、自分でアプリに「陽性」と入力します。するとコードを手掛かりに、花子など太郎と接触した人のスマホすべてに、「陽性者と接触しました」通知が届くのです。

よくできた仕組みなので多くの国で採用が始まっています。

どれだけ普及

日本では、陽性であることは、医療機関から保健所を通じて本人にメールなどで通知されます。この時通知された処理番号を、自分で入力します。陽性でない人が登録するのを防ぐためです。

プライバシーを守るため「コード」は2週間で削除されます。スマホのブルートゥースをオフにしていれば、接触記録はされません。

問題は、多数の人が導入しないと効果がないことです。各国の目標は6割程度。コロナウイルスに関するアプリ開発に携わるJX通信社の米重克洋代表は「60%も普及しているアプリはLINEくらいしかなく、非常に高いハードルだ」と指摘します。「入れたスマホをみせると買い物で得をするなど、インセンティブをつける方策もあり得るのでは」とも。

ドイツの意向調査では、入れたい人と入れたくない人が半々だったといいます

集中管理と追跡

プライバシーが損なわれるのをある程度は仕方がないとする国では、「追跡アプリ」を導入しています。スマホの位置情報などから、感染者の存在を周囲に知らせます。政府が各種の情報を集中管理します。

中国は今回、「健康コード」を導入しました。スマホ画面上で表示し、持ち主の感染リスクを示します。さまざまなところで健康コードの提示が求められ、通行手形のように機能しています。感染リスクを算出するのはAIです。位置データ、医療データなど、これまで蓄積された個人情報を総合し、人手を介さずに、赤(感染者、濃厚接触者)、黄(リスクのある人)、緑(問題ない人)の三色に判定します。先進的なシステムではありますが、誤って赤と判定されてしまい、生活に支障が出たという報告もあります。

インドも、中央管理の追跡アプリ「アーロギャ・セツ」(健康橋)を開発し、公務員や会社員に対し、スマホに入れることを義務付けています。中国の健康コードと同様、自分が感染者でないことを示すためにも用いられています。

日本の「COCOA」は、稼働を始めたばかりの中央サーバー「HER-SYS」(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム)と提携しています。個人情報はやりとりしないことになっていますが、位置情報を把握して集団感染の早期発見に役立てたいという意向もあるようです。

病気が広がるのは困りますが、行動制限を受けたりプライバシーが侵されたりするのも避けたい。日本は両立を図ることができるのでしょうか。

(2020年6月22日付中日新聞朝刊より)※この記事は、中日新聞社の許諾を得て転載しています。
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