マイティラインとは

一面のトップ記事 手帳に書き写し

    • 2019年06月12日(水)
    • いいね新聞生活
2017年に初めて、新聞連載小説に挑戦した。新聞8紙に掲載の「ブロードキャスト」。若い人たちに新聞を読んでほしくて、高校の放送部の物語にした。どこと特定はしていないけれど、都会じゃなく地方の物語。10代の人には自分と重ねて読んでほしいし、大人の人にも身近にある学校と置き換えて読んでもらえたらうれしい。 大学生の頃、新聞の一面トップの記事の見出しと最初の段落を、毎日手帳に書き写していた。私のアパートにはテレビがなく、まだインターネットも普及していない頃だった。世の中で起きていることを知るにはほぼ新聞しかなかったから、一面だけでも追いかけていれば、ある程度のことが分かるんじゃないかという気持ちだった。 高校生の娘はあまり新聞を読まない。周りの子供たちもそうなんだろうなと思う。テレビもあまり見ないけれど、ネットの動画サイトを熱心に見ることも。情報の仕入れ先がネット中心になってきたと強く感じる。 ネットなら知りたいことしか調べないけれど、新聞は広げたら興味があることや知りたいことは少ししかなくて、自分が知りたいことは全体のたったこれだけなんだと気付かせてくれる。知らないことがまだまだ多いと知ることが、大切なんじゃないかと思っている。 東京から発信されるニュースも大事だし、地元の新聞が発信する身近なニュースもとても大事だと感じる。私も地方に住みながら作家になり、今も地方で書いている。デビュー10周年を記念して、47都道府県サイン会ツアーを実施した。来てくれた若い人たちが、自分も作家になれるかもって思ってくれたらうれしい。(新聞科学研究所【生活に役立つ】湊かなえ(みなと・かなえ)さんのコラム) 【湊かなえ(みなと・かなえ)】 1973年広島県生まれ。「聖職者」で2007年に小説推理新人賞、「告白」で09年に本屋大賞、「望郷、海の星」で12年に日本推理作家協会賞(短編部門)、「ユートピア」で16年に山本周五郎賞を受賞。兵庫・淡路島在住。