マイティラインとは

土岐川のあゆみ—川の流れは人のつながり

    • 2018年09月18日(火)
    • 写真館
金山温泉前あたり(昭和2年)

 源流から河口までの長さが96kmの庄内川水系土岐川は、恵那市の夕立山を源とし、瑞浪、土岐、多治見市を流れ、愛知県境から庄内川と名前を変え、春日井市、名古屋市を経て伊勢湾へ注ぎます。昔から川は、その色や臭いで市民の生活環境を無言で物語ってきました。

 戦前、川の水は美しく、ある古老の話で、「子どもの頃、風呂に入るのは一週間に一度くらい。夏は土岐川が風呂代わりやったわ」と。記念橋の上流にある鼠(ねずみ)岩付近や、永保寺近くの睡牛岩や龍浮淵(りょうふえん)あたりは子どもたちの遊び場、脇之島付近では土岐川に舟を浮かべ優雅に舟遊びを楽しむなど、なんとものどかな風景が目に浮びます。明治26年頃、兼業で漁業を営む家が10軒ほどあり、投網や張切網を使い、鮎、ウナギ、鯉、ナマズなどを捕まえていたなどと記録が残されています。

 江戸時代から焼き物に使用する陶土や絵薬などの原料を掘り、燃料用の薪などを山から取るため、山林が荒廃し、大雨のたびに川に土砂が流入、川床が高くなり、氾濫しやすくなるなど、地場産業の発展は、住民に潤いを与えると同時に被害も及ぼしてきました。また、昭和20年代中頃から50年代を中心に陶磁器の大量生産に伴い、製陶工場の排水がそのまま川へ流され土岐川が真っ白に。

 濁りがひどくなってきた50年頃、東濃3市2町の住民団体と自治体で「土岐川を美しくする会」を発足。水質改善活動の結果、同年代中頃から徐々に改善されていきました。

土岐川観察館 開館 故宮島弘佳さん

 平成14年、市民の川に対する関心を高め、河川環境の保全を図る目的で、土岐川観察館を開館。故宮島弘佳館長を筆頭に、何十年先の未来まで美しい川でいられるようさまざまな取り組みが行われ、現在も続いています。

 「川の流れは人のつながりです。それは、歴史と文化と心のつながりで、なくしてはいけない大切なものです」。川を愛し、守り、子どもたちに川の大切さ、怖さ、川遊びの楽しさを教え続けてきた、在りし日の宮島さんの言葉が心に染み入ります。