【コロナ対策】新聞で正確な情報を!/学ぼう!ワクチン「新型コロナと闘う」㊤
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- 2021年03月05日(金)
- いいね新聞生活
なんで打つの?
医療従事者を対象に17日から接種が始まった新型コロナウイルス感染症のワクチン。四月以降は高齢者らへの接種も始まるが「打つ」「打たない」は自分で決めないといけない。判断するには、仕組みや効果、安全性についてしっかり理解することが必要だ。そこで「今さら聞けない」といった内容も含め、全三回で解説するのが、この連載。初回のテーマは「そもそもワクチンって何?」。(植木創太)
感染の予行演習 免疫を付ける
「ワクチンは何のために打つのか」。答えは「免疫を付けるため」だ。
免疫とは、細菌やウイルスといった病原体を取り除こうと働く防衛機能。日本ワクチン学会理事で、藤田医科大教授の吉川哲史さん(59)によると、大きく分けてもとから体に備わっている自然免疫と、獲得免疫の二つがある。
病原体が体内に入ると、まず働くのは自然免疫。病原体を食べたり分解したりする。続いて活躍するのが獲得免疫だ。自然免疫を担う細胞から受け取った情報を基に、病原体を見分け、武器となる「抗体」をつくったり、感染した細胞を殺すリンパ球をこしらえて戦ったりする。次に入ってきたときに素早く攻撃できるよう、病原体の特徴を覚えておく機能もある。
病原体や、その一部を体内に入れ、二つの免疫が働きやすいようにするのがワクチンだ。「あらかじめ戦い方を覚えさせる」という吉川さんの説明が分かりやすい。
大まかに二種類あり、一つは弱毒化した病原体を体内に入れ、軽く感染させる「生ワクチン」。麻疹や風疹を防ぐMRワクチンなどがこのタイプだ。もう一つが毒性を失わせるなどした病原性やその成分を接種し、記憶させる「不活化ワクチン」で、日本脳炎、肺炎球菌を予防するワクチンなどが当てはまる。インフルエンザは両方のタイプがあるが、日本で承認されているのは不活化だけだ。
一方、国内で医療従事者に接種が続く米ファイザー製は、世界で初めて実用化された技術を採っている。ウイルスの設計図である遺伝物質「メッセンジャーRNA(mRNA)」を人工的に合成。非常に壊れやすいため脂質の膜に包んで接種、細胞に取り込ませることでウイルスの成分を体内でつくらせる。その結果、抗体ができ、感染に備えて戦い方を記憶させられるわけだ。変異に対応した作り替えも容易という。
世界の感染者数の累計は21日現在、一億一千万人。死者は約二百四十六万人にも。特効薬がない中、この一年、感染を収束させることができた国・地域は世界中どこにもない。自然感染によって感染が広がりにくくなる「集団免疫」の状態にするのは時間がかかる上、その間も死者や重症者は増え続ける。
吉川さんによると、ワクチンで免疫を付けるメリットが大きいのは、医療従事者に続いて接種が始まる高齢者だ。発症してしまうと重症化する確率が高いためで、三十代を「1」として国内の重症化率を比較すると、六十代は25倍。七十代は47倍、八十代では71倍にもなる。
「収束への切り札」の期待が高いワクチン。次回24日付では、見込まれる具体的な効果、反対に現時点では分からないことなどを整理する。
(令和3年2月23日付中日新聞朝刊より)
※この記事は、中日新聞社の許諾を得て転載しています。
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