侍ジャパン(大野雄)「金」の舞台裏 独占インタビュー「稲葉監督うまい」
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- 2021年08月13日(金)
- ドラ番記者プラール

侍ジャパンの一員として東京五輪で金メダルを獲得した、中日のエース・大野雄大投手(32)が9日、本紙の独占インタビューに応じた。全勝Vの要因、稲葉監督の素顔、最年長侍としての思い、コロナ過の戦い・・・。5戦全勝で世界一へと駆け上がった稲葉ジャパン激闘の舞台裏を、全て明かしてくれた。(聞き手・渋谷真)
約束だったメダル「雄介、やったぞ」
-栗原選手から掛けてもらった金メダルは重かった?
(大野雄)「先に掛けていたメンバーが『重い』と言っていたんですが、いざ自分が掛けられた時の重さは全然覚えてないんですよ」
-決勝当日の取材にも答えていましたが、そのメダルを天に掲げた
「ナゴヤ球場のトレーニングルームで、僕が(次の登板に備えた)残留練習で、(木下)雄介がリハビリ。侍ジャパンのメンバーが発表された後だったので『おめでとうございます。金メダル取ったら、見せてくださいね』って言われたんです。ささいな会話。『おお、頑張ってくるわ』って返して。まさかそれが最後の会話になるとは・・・。その約束を覚えていたので。声には出しませんでしたが、心の中で『やったぞ』ってつぶやいてました」
登板1試合のみに「すまん」気配りが団結生む
-登板こそ準々決勝の米国戦(2日)の1イニングだけでしたが、実は先発が内定していた?
「まず予選リーグが1位以外なら、2日に行く予定でした。次がその米国戦や韓国との準決勝に負けていれば連戦になるので僕が先発でした」
-え、でも4日の韓国戦ではブルペン待機していましたよね?
「そうです。追いつかれずにリードしていれば投げていました。7回も左打者からなら(伊藤ではなく)僕でした」
-翌日の先発でありながら、リリーフ待機・・・。シーズン中ではあり得ないですよね
「確かに絶対にない(笑)。それが国際大会というか短期決戦というか。出たことはないですが、日本シリーズの第5戦以降のような感じでしたが、不思議なものでその場では『よし、やったる』って気持ちになるんですよ」
-接戦続きでしたが、結果として5連勝。勝因は?
「チームワークじゃないでしょうか。サヨナラが2試合。苦しい戦いばかり。稲葉さんはコミュニケーション取るのがうまい。本当にいい人なんです。僕が1試合しか投げてないから、顔を見る度に『ごめん、すまん』と言われて・・・。どの選手にもそうなんです。あの気配りは簡単じゃない。優勝して涙していましたが、一番苦しかったのは稲葉さん。それを知っているから『監督のために』って思ってた選手はたくさんいたと思います」
遅刻にも動じない西武・平良くん 冗談抜きでこういう選手が中日に必要
-印象に残った出来事は?
「平良くんですかね。3週間過ごして・・・。いや、すぐにわかりました。何事にも動じない」
-そういえば〝平良事件〟があったとか
「仙台合宿の初日ですね。全体ミーティングですよ。団結式といってもいい。そこに1人だけ来ない(笑)。5分前にマネジャーが呼びに行ったら、忘れていた。ところが平良くん。慌てるどころか、どうせ遅れるのならとシャワー浴びてから来たんですよ!そのまんまの平良くん」
-天然なのか天才なのか?
「初戦に投げた後も『全く緊張しなかった』と言ってました。西武という環境でスクスク育っているんですね。源田に聞いても『いつもこんな感じです』と。これは冗談抜きで思いますが、こういう選手が中日に必要だと・・・。見逃してくれる雰囲気と動じない心」
侍の未来は明るい
-坂本や田中らとともに最年長侍。若手から大いに刺激を受けましたか?
「森下、伊藤、(山本)由伸・・・。日本代表の未来は明るいと思いました。伊藤、いやヒロミと呼んでいましたが、後々は代表でも先発すると思います。交流戦で投げ合ったときから魅力は感じていましたが、芯というか投手としての大切なものを感じる。今回、選んで(代替選手)本当に正解だったんじゃないですか」
大学生にも気遣い
-期間中、キャッチボールはボランティアの大学生とやり続けました。投手陣は奇数(11人)とはいえ、チーム専属のスタッフもいたのに・・・
「練習日も含めて、毎日、違う子とやったと思います。日体大の野球部員でした。だから『辻さん(孟彦。元中日で日体大のコーチ。大野にとっては中学、高校の後輩でもある)にお世話になってます』とか言ってきて。こっち(プロ)には小さなことでも、向こうには忘れられないことなんじゃないかなと・・・。いいヤツぶりたいわけじゃないんですが、そういうの大事にしたいですよね」
-アテネ五輪では長嶋茂雄監督が選手に「野球の伝道師たれ」と説きました。大野雄の球を受けた感動をいつか後輩や教え子に伝えていく。あなたは立派な伝道師です
「いや、ボランティアは大変だったと思いますよ。9月から自分たちのリーグ戦も始まるのに、僕らの球拾いやって。当たり前やと思ったらあかんのじゃないかなと」
不慣れな生活適応
-侍ジャパンは選手村ではなくホテル滞在とはいえバブル方式。それを支えてくれた人もいましたね
「コンビニにすら行けない生活は初めての経験なので。でも自分一人のせいで、チームに迷惑はかけられない。ウーバーイーツはOKだったので午前中ならコーヒーとか。決勝前日の夜ご飯はココイチでしたよ!海の幸カレーです。そういう意味では本当に日本で良かった」
竜から1人でも多く侍に 「周平が昂弥が打った・・・絶対誇らしい」
-最後に。これからは「沢村賞投手」の肩書に「金メダリスト」が加わります。未来への思いを
「ドラゴンズから1人でも多くの代表が選出されることを強く願います。(山田)哲人、甲斐・・・。自分の仲間が輝いていたら、こんなにうれしいことはない。僕はどんな起用法でも行きたいと言い続けましたが、そんな選手が1人でも増えるのが見たい。うちの(高橋)周平が打った、(石川)昴弥が打った・・・。絶対に誇らしいことですから」
【取材後記】好感度も金メダル級
侍ジャパン番記者の中で、大野雄の好感度は間違いなく〝金メダル級〟だった。仙台合宿では日替わりで24人の侍全員が取材対応。ただ、直前の緊張感とオンラインの難しさで、誰もがスムーズに受け答えしていたわけではなかった。
大野雄は対応時間、言葉のチョイス、誠意ある答えと断トツの対応力を発揮。普段は大野雄と接しない何人もの同業者が「すばらしい選手ですね」と褒めちぎっていた。なぜか、日頃取材しているこちらまで鼻高々。〝おらがエース〟が誇らしかった。
(令和3年8月10日付中日スポーツより)
※この記事は、中日新聞社の許諾を得て転載しています。

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