マイティラインとは

多くの人の手を経て届く重み

    • 2020年01月06日(月)
    • いいね新聞生活

 口に含んだ時のかすかな甘みで紙の種類の違いを言い当てる出版社の資材担当社員。写真家などから指名が入る印刷所の製版の「プロ」。テレビドラマにもなった漫画「重版出来!」を描くため、取材する中で出会った人たちだ。この作品は、週刊コミック誌の新人編集者が主人公だが、編集部だけでなく、本に関わる全ての職種を取り上げているため、本当にたくさんの人と会った。

 連載を始めた頃は漫画家デビューから15年がたっていたが、目にしていたのは、漫画を描いて編集者に渡す所まで。でも、自分が描いたものが読者に届くまで、実は多くの人に支えられていることが分かると、本のありがたみが変わった。

 新聞も読者が手に取るまで、多くの人が関わっているはず。例えば、配達する人がいるから、どんな日でも届く。昔、漫画家のアシスタントをやっていた頃、仕事を終えて帰るのは朝方が普通だった。朝の4時や5時に、よく新聞配達の人とすれ違い、「偉いなあ」と思った記憶がある。

 その新聞だが、子どもの頃から、必ず目を通すのは四コマ漫画。大人になってからは、海外の特派員が、日々の生活で見聞きしたことを書いたコラムなどにもひかれるようになった。国内発でも有名人ではない一般の人々のインタビュー記事は読んでいて楽しい。

 そういう記事を目にすると、切り抜いて、ファイルをするのが習慣になっていて、「何かネタがないかな」という時に「そういえば、この話、気になっていた」と調べたりする。大きな出来事だけでなく、個人がどう感じ、どう生活しているか、垣間見える記事も載っているから新聞は面白いと思う。

(新聞科学研究所【仕事に役立つ】松田奈緒子さんのコラム)

【松田奈緒子さん】
1969年長崎県生まれ。約7年間のアシスタントを経て、96年に雑誌「コーラス」に掲載された「ファンタスティックデイズ」でデビュー。2012年に連載を始めた「重版出来!」は17年に小学館漫画賞受賞。他の作品に「レタスバーガープリーズ.OK,OK!」「えへん、龍之介。」など。