マイティラインとは

「大図解」に学ぶ

    • 2021年06月20日(日)
    • いいね新聞生活

日曜日の朝刊に挟まれる「サンデー版」。中日新聞のサンデー版は別刷り8ページです。中面に掲載されている「クロスワード」や「間違い探し」を楽しみにされている読者も多いのではないでしょうか。

中日新聞のサンデー版の売りといえば、やはり「大図解」です。掲載は1500回を超え、中日新聞や東京新聞だけでなく、全国のいくつかの新聞でも使用されています。

最近ですと、6月6日付は日本の男女間格差の問題を扱った「ジェンダーを考えよう」、5月30日付は新型コロナウイルスに関係して「免疫の暴走を防ぐには」、5月23日付の「ヤングケアラー」では、家族の介護や家事を担う18歳未満の子どもの実態が紹介されていました。

取り上げられるテーマの多くは、朝夕刊の一般記事でも扱われていますが、関心が薄いニュースだと、つい読み飛ばしてしまいがちになります。この点、大図解は、一つのテーマについて1面と最終面をつなげた見開き展開の上、イラストやグラフをふんだんに用いたビジュアルな紙面なので、それまで気に留めなかったり、認識不足だったりするテーマであっても、関心を寄せるきっかけとなります。

それを痛感したのは、5月2日付の大図解「子どもの食は大丈夫か」でした。日本の食といえば、料理の多様さ、素材の豊富さ、鮮度、繊細な味と、世界的に見てもトップレベルにあることに異論はないでしょう。自身、安全性についても、日本は諸外国に比べて農薬などの基準が厳しく、総じて国産の方が輸入物より安全で安心できる、と思い込んでいました。

ところがどうでしょう。この号では「日本の近年の状況は、食の安全性を重視し、有機農業の推進に舵を取る欧州諸国の潮流と大きく異なる方向に進んでいる」と指摘します。農薬使用量の国際比較のグラフでは、単位面積当たりの日本の使用量(2006年値)は韓国と並んで最多レベル。葉物野菜などへの殺虫剤の残留基準値は2015年に大幅に緩和され、ホウレンソウだと国際基準の20倍、米国の13倍も上回ります。

厚生労働省の見解では「改正前の基準では国内のホウレンソウの栽培が立ちゆかない」のがその理由だそうです。除草剤についても、2017年の食品中残留基準値の引き上げにより、それ以前はEUの半分だったのが、逆に3倍に増えました。

グラフを目にして「日本はいつの間にこんな緩い基準になってしまったのだろう」というのが率直な思いでした。そして「こんなことで子どもたちを安全な食べ物で守り育てることができるのか」と、時代の流れに逆行し、食の安全性より経済を優先させる国の施策に憤りが湧いてきました。この大図解を目にしなければ、日本の食の安全神話を信じ続けていたことでしょう。大図解を通して「知る」ことの大切さをあらためて学びました。(有)