傍らにはいつも、スタンドで固定したスマートフォンが置いてあった。トミー・ジョン手術から復帰を目指すリハビリ期間。梅津はキャッチボールの様子を毎日動画に収めていた。何人もリハビリに取り組む選手を見たが、ここまで毎日撮る選手は珍しい。

手術後から決めていたという動画撮影。目的は理想のフォームと現実のギャップを埋めるためだった。「僕自身が“梅津のコーチ”になれるように。感覚と投げ方を毎日擦り合わせたかったからです」。元々器用なタイプではない。今もスマートフォンの容量を圧迫しているという映像は試行錯誤した日々の記録だ。

31日のヤクルト戦（バンテリン）で817日ぶりの1軍マウンドに立つ。自分と向き合いながらつくりあげてきたフォームで投じる1球1球をしっかり見届けたい。

長森　謙介