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【コロナ対策】新聞で正確な情報を!コロナ深知り!③「コウモリが起源なの?」

    • 2020年05月30日(土)
    • いいね新聞生活

ウイルスの「貯水池」

新型コロナウイルスは、もとはコウモリが持っていたウイルスが、他の動物を経由して人間に感染したようです。今後、同様の感染症を防ぐため、研究者たちはこの感染経路の解明を目指しています。一方、近年人類を困らせている感染症には、コウモリを起源にする病気が多いことも見えてきました。(森耕一)

密集して生息 リスク高める

「圧倒的多数の研究者は、新型ウイルスはコウモリを起源とする天然のウイルスだと考えている」。世界的科学誌ネイチャーが今月、ウェブでこう報じました。米トランプ政権は、中国・武漢のウイルス研究所から流出した可能性をほのめかしていますが、科学的証拠はありません。

バットウーマン

話をややこしくしているのは、コウモリ由来という証拠を2月初旬に発表したのが、この研究所の石正麗氏らのグループだからです。2013年に中国雲南省で捕獲したキクガシラコウモリから検出したコロナウイルスの遺伝子が、新型ウイルスと96%一致したのです。

石氏らのチームは、2002年に発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)が、同じキクガシラコウモリを起源とすることを証明しました。第一人者の石氏は欧米メディアで「バットウーマン」と呼ばれ、最近は発信を控えていることから「ウイルス起源について情報を持って亡命した」とのうわさも流れました。

ただ、研究者の見方は冷静です。コウモリから人への感染症を専門にする岡山理科大獣医学部の吉川泰弘教授は「中国の研究者は、SARS発生以降、起源を追う論文を出し続けてきた。石氏はそのチームの1人」と話します。グループは、キクガシラコウモリがSARSに似たウイルスを多数持ち、人に感染する恐れがあることも示してきました。

今回、1カ月ほどの間に中国の研究者がウイルスの遺伝子配列を解明し、SARSと遺伝子の8割が共通する「同種」であることや、コウモリ起源の可能性が高いことまで突き止めました。吉川さんは「蓄積があったからできた研究。新型ウイルスの起源がコウモリだということを疑う研究者はいないのでは」と話します。もともとウイルスを持つコウモリのような動物を「自然宿主」と呼びます。

中間宿主

次の課題は、コウモリと人をつなぐ動物を突き止めることです。新たな感染症は、人里離れた場所に生息していた自然宿主が、自然破壊や開発で家畜など人間に近い動物と接するようになり、そこから人間にうつるケースが多いのです。このようにウイルスを媒介する動物を「中間宿主」といいます。

SARSの場合は捕獲して市場で食用に売られていたハクビシンからウイルスが検出されています。新型ウイルスでは、中国に密輸されたアリクイに似た姿のセンザンコウから、新型に近いウイルスが検出されていますが、中間宿主と決めるには異論が多いようです。

ところで、近年人類を脅かしている感染症は、新型コロナ、SARSに加え、中東呼吸器症候群(MERS)、エボラなどコウモリを自然宿主とするウイルスが多いのです。

カリフォルニア大のグループは、コウモリは免疫の働きが活発なため、多くの病原体を症状が出ないまま体内に持つことができる「病原体の貯水池」だと発表しました。強い免疫の中で、ウイルスは毒性が高まる方向に変異する可能性があるとも指摘しています。

200万匹

吉川さんは「コウモリの免疫の仕組みが他の哺乳類と違うわけではなく、極めて密集して生息していることが重要だ」と分析します。吉川さんらは、フィリピンの洞窟にいるルーセットオオコウモリが、アジアでのエボラウイルスの自然宿主だと突き止めました。調査では、洞窟内は20メートル当たり200万匹のコウモリで埋め尽くされていたそうです。

まさに三密。感染症が広がりやすい環境で暮らし続け、結果的にたくさんの感染症と共存できるようになったのです。さらに、コウモリはえさを探して飛び回るため、さまざまな動物と接触し、病原体を広げやすいのです。

吉川さんは「人類も哺乳類の中で異常に密集した生活をしている」と指摘します。そんなコウモリと人間が交わる機会が開発によって増え、新興感染症のリスクを高めました。吉川さんは「コウモリの持っているウイルスをあらかじめ調べ、人類に危険をもたらしそうなものに備えておけば役に立つ」と指摘しています。

(2020年5月25日付中日新聞朝刊より)※この記事は、中日新聞社の許諾を得て転載しています。
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