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【コロナ対策】新聞で正確な情報を!コロナ深知り!⑩「分かってきたマスクの効果」

    • 2020年09月26日(土)
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発症前の拡散を防ぐ エアロゾル半減

新型コロナウイルスが世界に広がって初めての夏。まだ厳しい暑さの中「マスクが苦しい」と感じる人もいるのではないでしょうか。マスクはなぜ必要なのでしょうか。あらためて、最近の研究や事例からその効果を探りました。(増井のぞみ)

方針転換

新型コロナウイルスの広がりで、マスクを巡る「医学の常識」が覆りました。

世界保健機構(WHO)は、初めは医療従事者や感染疑いがある人などにマスク着用を勧めてきました。ところが6月、人との距離を取ることが難しい場合、だれでもマスクを着用したほうがいいという指針を出しました。方針を転換したのです。

背景には、新型コロナウイルスの特徴が分かってきたことがあります。インフルエンザなど、これまでの感染症は発症後に感染力がピークに達しますが、新型コロナは発症前から感染力が強いと分かったのです。中国の研究チームは4月、「発症時または発症前に感染力のピークが来た」と推測しました。現在は厚生労働省も感染可能期間を「発症2日前から」としています。

つまり、発症前から、くしゃみやせき、会話などでウイルスを含むしぶき「飛沫」を周囲に飛ばしているということです。ですから、体調に異常がなくても、飛沫を抑えるためマスクを着けようということになったのです。

新しい研究

マスクが飛沫や感染を抑える効果はどうなのでしょうか。研究が盛んになっています。

理化学研究所は6月、独自の実験結果をもとに、新しいスーパーコンピューター「富岳」を使い、せきや会話で飛沫が飛び散る様子を詳しくシミュレーションしました。

マスクをしていないと、しゃべるだけでも飛沫は勢いよく飛び出します。大きな飛沫は2メートルほどの範囲に落ちますが、小さな飛沫は空気中を漂います。

マスクをすると、飛沫の勢いがかなり抑えられます。それでもマスクと顔との間から漏れていきます。不織布マスクのシミュレーションでは、5マイクロメートル以上の飛沫はほぼ捕集でき、0.3~5マイクロメートルの微小飛沫「エアロゾル」は50%ほど漏れましたが、半減しました。マスクをぴったり着けて隙間をなくした場合、漏れは10%ほどに減りました。

理研チームリーダーの坪倉誠・神戸大教授は「周りに人がいる場合、マスクは大前提」と効果を語ります。さらに「マスクと併用して換気することが重要。エアロゾルは空気中を漂うので、部屋の換気をして外へ逃す必要がある」とも指摘します。

新型ウイルスは、エアロゾルの状態で3時間以上生存することが確認されています。マスクを着けると、吸い込むエアロゾルや飛沫も同じように減らすので「自分を守る効果もある」そうです。布マスクは不織布より少し性能が落ちるものの、大きな飛沫はかなりカットできるという結果でした。「通気性のよいマスクは効果が落ちるが着けないよりだいぶいい」と坪倉さんは話します。

相次ぐ報告

米の研究チームは6月、「イタリアや米ニューヨーク市では、マスクなど顔を覆う物の義務化で新型コロナウイルス感染症の新規感染者が大幅に減った」と発表しています。また、カナダのチームが重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)と新型コロナに関する16カ国の論文172件を分析したところ、マスクが感染リスクを60~85%下げるとの結果が出ました。

7月には、ウイルスに感染した美容師2人が139人を接客したが、美容師も客もマスクを着けており、追跡調査したが感染は確認されなかった、という例を米疾病対策センター(CDC)が報告しています。

マスク着用は、いますぐできる効果的な感染拡大の防止策といえそうです。ただ、マスクは熱がこもりやすく、熱中症を防ぐため、特に子どもや高齢者では注意が必要です。

坪倉さんは「マスクを着けられない場合は、マウスシールドで代替した上で距離を取って換気を良くするなどリスクを減らすことが大事」と話します。理研ではフェースガードやマウスシールドなどの効果もシミュレーションして発表する予定だといいます。どのように効果的に飛沫やエアロゾルを抑えて感染を減らすか、さらに研究が続いていきます。

(2020年8月24日付中日新聞朝刊より)※この記事は、中日新聞社の許諾を得て転載しています。
※第二波が来ています。日々の状況は新聞でご確認いただき、感染予防に努めて下さい。