【コロナ対策】新聞で正確な情報を!コロナ深知り!⑪「人が集まる場での飛沫対策」
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- 2020年10月21日(水)
- いいね新聞生活
マスクと換気の2本立て
新型コロナウイルスを含んだ飛沫がどう飛び散るのか。理化学研究所はスーパーコンピューター「富岳」を使った新しい計算結果を出しました。コンサート会場や病院など人が集まる場所でどこに注意すればいいのか、ヒントを探りました。(増井のぞみ)
イベントの再開 定員まず半分で
理研は8月24日、富岳を使った新たなシミュレーション結果を発表しました。目に見えない飛沫がどう飛び散るのか計算で描き出し、それをマスクでどう抑えられるのか示したのです。
2千人程度の観客が入る多目的ホール。ステージの上に立った人が歌うと、10マイクロメートルよりも大きな飛沫は2メートル以内に落ちますが、5マイクロメートル以下の微小飛沫「エアロゾル」は2メートル以上飛び散って広がります。計算で、不織布やポリエステルのマスクは飛び散る飛沫の8割、綿の布マスクでは7割を抑えると分かりました。いずれのマスクもエアロゾルは半減します。一方、フェースシールドが抑える飛沫は1割未満。大きな飛沫は5~9割抑えますが、エアロゾルはほぼ漏れるという結果になりました。
両方で効果
また計算では、人がマスクなしで飛沫を吸い込むと、大きなものは大半が鼻や口にとどまる一方、エアロゾルなど小さな飛沫は気管の奥まで到達するものが多くなることも示されました。理研チームリーダーの坪倉誠・神戸大教授は「大きな飛沫を抑えるのはマスク、小さな飛沫は換気で外へ逃がすという2本立てが大事」と話します。
不織布マスクがどれぐらい吸い込む飛沫を減らすかも計算してみました。顔とマスクを密着させて隙間ができないように着けた場合は、吸い込む飛沫をほぼブロックできました。隙間がある場合も、大きな飛沫はブロックし、小さな飛沫も侵入が減りました。坪倉さんは「マスク着用で吸い込む飛沫の量を7割は抑えられる。感染した人としていない人の両方がマスクをつけるとかなりの効果がある」と指摘します。
換気による効果はどうなのでしょう。先ほどのホールでは、空調設備から空気を取り込み排出して、10分程度でほぼ清浄化されます。飛沫はどう飛ぶのでしょうか。観客が強いせきを繰り返した場合、マスクなしでは大きな飛沫が後方からの送風に乗り左右や前列まで広がっていきます。
マスクを着けると、大きな飛沫は抑えられますが、小さな飛沫は漂い、空調による空気の流れに乗って周囲へ運ばれます。計算では、空気が後ろから前へ流れる場合、前の座席まで広がる様子が示されました。
「換気をして、マスクをしていても、両隣や前にはリスクがあるのではないか。定員をまずは半分ぐらいにして、マスクを着けた状態でイベントを再開して、クラスター(感染者集団)が発生しないかを見極めて段階的に緩くしていくことが大事」と坪倉さん。
エアコン
富岳では、多目的ホールのほか、病室やオフィス、教室でも換気の効果を調べました。カーテンで仕切られた4人部屋の病室では、換気口で新鮮な空気を取り入れて排出していますが、仕切りのせいで換気のムラができます。部屋に汚い空気を満たして500秒後、空気の約2割が換気されましたが大半は汚い空気のままでした。しかし、エアコンをつけていると、およそ倍の4割が換気されました。
坪倉さんは「窓を開けるなどの換気に加え、エアコンで空気をかき混ぜると、きれいになるのが速い」と話します。エアコンに換気を促す効果があるというわけです。ただし「閉め切った部屋のエアコンは、空気が循環する通り道ができてリスクを高める」そうです。
これまで、暑い夏や寒い冬にエアコンをつけるときは換気を抑えるのが常識でした。換気しながらエアコンをうまく使えば、感染リスクを下げられる場合もあることが分かりました。
(2020年8月31日付中日新聞朝刊より)※この記事は、中日新聞社の許諾を得て転載しています。
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