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【コロナ対策】新聞で正確な情報を!コロナ深知り!⑮「冬の感染防止対策」

    • 2020年11月25日(水)
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湿度と距離にご注意

理化学研究所などのチームは新たに、スーパーコンピューター「富岳」を使ってウイルスを含む飛沫の拡散と湿度との関係などをシミュレーションしました。その結果から、冬の感染防止対策について考えました。(増井のぞみ)

加湿の目安は60%

まず、新型コロナウイルスの大きな感染経路の一つ、会話などにともなって飛ぶ「飛沫」の飛び方を見てみましょう。富岳の計算では、一分当たりに口から出る飛沫の数は、会話しているときが約九百個、歌などで大きな声を出すと三倍近い約二千五百個に増えます。せきを強く二回したときは、計三万個ほども飛沫が飛ぶという結果が出ました。

理研チームリーダーの坪倉誠・神戸大教授は「二十分程度の会話で、せき一回とほぼ同じ程度の飛沫が漂う。五分程度のカラオケを一曲歌うのも大体同じ」と話します。

まずはマスク

飛沫を抑えるには、マスクを着けることが大事です。また、マスクを正しく着ければ吸い込む飛沫の量を三分の一に抑えられることも富岳によって示されました。坪倉さんは「『鼻から飛沫が出ない』といって、鼻にマスクがかかっていない人がいる。自分を守るためにも覆った方がいい」と指摘します。

秋が深まりつつありますが、湿度が低くなる冬には飛沫はどのように飛ぶのでしょうか。富岳は、湿度30%、60%、90%の時にオフィスで四人が机に座り、うち一人がせきをした想定で計算しました。

すると、湿度によって、机の上に落ちる飛沫の数に大きな差がありました。湿度が90%の場合は、口から直接出た大きな飛沫はたくさん落ちます。一方、30%では机に落ちた飛沫がかなり減る一方で、五マイクロメートル以下の小さな飛沫「エアロゾル」が空気中を大量に漂うという結果になりました。

空気が乾燥すると、飛沫の水分がすぐに蒸発し、小さなエアロゾルに変わるのです。

エアロゾルは室内を長時間漂って、マスクと顔の隙間から吸い込まれます。坪倉さんは「換気が一番ですが、加湿器で湿度を上げて空気中を漂う飛沫を減らす対策も重要。60%くらいの湿度が目安」と強調します。

夏と冬で逆

では、湿度が高い夏には危険がないかというと、そうではありません。テーブルに落ちる大きな飛沫の量が増えるからです。テーブル上の飛沫に触れた手で鼻や口を触ってしまい「接触感染」が起こるリスクが高まるのです。テーブルふきや手指のアルコール消毒がより大切になります。坪倉さんは「夏も冬も換気と消毒の両方が必要だが、冬は換気、夏は消毒が特に大事」と説きます。

例年なら年末は、忘年会や帰省など人が集まる機会が増える時期です。

感染を防ぐポイントの一つが距離です。富岳の計算によると対面でマスクを着けずにせきをした時、1.2m離れた人に、口から出た飛沫の5~6%が降りかかります。それが1mになると20%、0.8mになると40%にまで増えました。

物理的に密になってしまうケースとしては、飲食店での会食が考えられます。できるだけ距離をとったうえで、飛沫を抑える効果の高いマスクを着けるのが理想的です。飲食時にはマスクを外すので、その際に会話して飛沫と飛ばすことがリスクを高めます。

おわん形 効果的

マスクを着けられない場合の代替として、理研などはマウスガードを提案しています。富岳で効果的なガードの形状を計算してみました。口元のみをカバーして鼻の所が開いたものや、鼻からあごまで覆うおわん形のものなど四種類で計算したところ、おわん形が最も効果的で、飛沫の水滴を七割抑えました。ただ、マスクに比べてエアロゾルの漏れる比率が高いので、感染リスクを下げるという点ではマスクにはかないません。

この成果を基に、サントリー酒類と凸版印刷がフェースシールドを開発中です。口からあごまではおわん形で、めがねタイプのフレームが付いています。口元のガードを開閉でき、透明で表情も見えます。凸版印刷の新井誠専務執行役員は「外食産業の活気を取り戻す一助に」と願っています。開発されたフェースシールドの設計データは公開される予定です。

冬にインフルエンザや風邪など感染症が流行するため、新型コロナの感染も再び増えるのではないかと危ぶまれています。冬のリスクを知り感染を防ぐ私たちの行動が大事なポイントになるのかもしれません。

(2020年11月16日付中日新聞朝刊より)※この記事は、中日新聞社の許諾を得て転載しています。
※第三波が到来しており、これからが正念場です。日々の状況は新聞でご確認いただき、感染予防に努めて下さい。