一回り年下の山本の語彙（ごい）力、適切な例えに感心させられっぱなしだった。球質測定を受けたブルペン投球後、目指す「空振りを取れるストレート」について話を聞いている時だった。

　スピンを利かせる腕の振りの意識を、文字だけでどう伝えるか。記者がよほど困り顔だったのか、さっそうと助けてくれた。「最近の家にあるか分からないですけど…」と前置きして「照明のスイッチのひもを、思い浮かべてください。斜めに引いても反応しないので、ひもに沿って一直線に上から下へ腕を振る。あくまで例えですけど」。脳裏に浮かぶ光景に思わずうなずいてしまった。

　帰宅後、感謝を込めつつ自宅で実践してみると、先端の引き手に指が引っ掛かり「ブチッ」。最後の一言を甘く見たツケに、ぼうぜんとするしかなかった。