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【コロナ対策】新聞で正確な情報を!/コロナ深知り!⑱「帰国者以外からも異変株検出」

    • 2021年02月07日(日)
    • いいね新聞生活

ウイルスと知恵比べ

新型コロナウイルスの変異株が世界に広がり、日本でも海外渡航者と接触がない人から検出されました。うつりやすく、ワクチンが効きにくくなるとの推測も出ています。一方で専門家からは「ウイルスの遺伝子が変異するのは普通のこと」との指摘もあります。変異で何が起こるのか、まず正しく知ることが重要です。(森耕一)

感染力高い特徴

多い日は一万件を超える東京都のPCR検査の中心となっている都健康安全研究センター。昨年十二月末から、新たな検査が加わりました。陽性と判定された検体をもう一度、別のPCR検査にかけるのです。二度目の検査は、変異株の遺伝子だけを検出。一月には、帰国者との接触がない女児からの変異株を検出しました。三チームが交代で検査し、変異株が広がっていないか監視を続けます。

英国のジョンソン首相が「感染力が七割強い恐れがある変異株が広がっている」と発表し、不安が一気に高まりました。同じ時期に、南アフリカ、ブラジルでも別の変異株が見つかり、三つの変異株が世界中に広まりつつあります。

✔スパイク

変異はどのように起きるのでしょうか。コロナウイルスは遺伝物質RNAをくるむ周囲の膜に、とげのようなスパイクタンパク質がついています。ウイルスが肺などの細胞にくっつくと、スパイクが鍵のように細胞の鍵穴にはまり、細胞とコロナウイルスの膜が融合。ウイルスは人の細胞に自らのRNAを送り込むことに成功し、細胞にRNAを次々にコピーさせます。

時々、コピーミスが起きます。このミスによって遺伝子が少し変わってしまったのが変異株です。ほとんどの変異でウイルスの性質は変わりませんが、RNAはウイルスの体の設計図なので、変異株はまれにもとのウイルスと少しだけ形が違う場合があります。特に細胞への侵入の鍵になるスパイクタンパク質に変異が起こると、細胞に入りやすくなる恐れがあります。

英国、南アフリカ、ブラジル型はそれぞれスパイクタンパク質に十カ所程度の変異が起きています。その三つともに「N501Y」という共通の変異があります。スパイクタンパク質の部品の五百一番目のアミノ酸が変化しているという意味で、感染しやすさに関連している可能性が指摘されています。

✔監視力

東京都の二度目のPCR検査はこのN501Yを検出しており、三つともの変異株を見つけられるといいます。英国はこうした変異を監視、解析する体制が世界トップ水準にあります。短期間で変異株の性質を解明することは極めて難しいのですが、変異株に感染した患者の広がり方の高度な分析から、感染力が高いと結論づけました。

日本では今のところ三変異株は広がっていませんが、東京、静岡では帰国者と接触のない人から英国型が検出され、市中に少しずつ漏れ出ていることも確かです。国際医療福祉大の高橋和郎教授は「人が出入国している以上、無症状感染者まで全て空港検疫で見つけることは不可能だ」と指摘。現在も国立感染症研究所が全国の検体の一部を集めて監視していますが、全国でより広く変異株を見つけられる体制が必要だと訴えます。

✔ワクチン

感染力とともに重要な指標は、症状を悪化させる病原性です。これまでの変異では「病原性の変化は確認されていない」と報告されてきました。ところが英政府は一月、英国型で致死率が高まっている恐れがあると発表しました。患者の病状を幅広く解析する英国だからこその成果ですが、早く発表して警戒を呼びかける意味合いも強く、分析の詳細は分かっていません。

またワクチンについて、製造するモデルナ社は、南アフリカ型で効果が低下する恐れがあると発表しました。南アフリカ型、ブラジル型の変異では、ウイルスが免疫を回避するように働く可能性がある共通の変異があることも分かっています。

開発されたRNAワクチンもスパイクタンパク質を目印にして感染を抑えるように設計されており、スパイクの形が変わる変異が重なると効かなくなる懸念があります。

とはいえスパイクの複数の特徴を目印にしており、数カ所の変化で全く効かなくなることはありません。最新技術を駆使したワクチンは、RNAそのものを接種して免疫細胞にウイルスを覚え込ませるため、変異に合わせてRNAの情報を書き換える改良が比較的容易なのが強みです。メーカーは早速改良に乗り出しており、遺伝子レベルで科学者とウイルスの知恵比べが続いています。

(2021年2月1日付中日新聞朝刊より)※この記事は、中日新聞社の許諾を得て転載しています。

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