25日付の当欄に続く新加入の山本選手をめぐるエピソードを。あれは2018年2月だったか。当時の所属先だった巨人は沖縄でキャンプをしていた。

「おまえは今からヤス(山本泰寛だ)。上半身の力を抜いて、グラブを持つ左腕を地面につけるようにして歩いてみろ。はい、スタート！」

那覇市内の公道で突然始まった当時の井端弘和内野守備走塁コーチによる記者へのマン・ツー・マンレッスン。打球への入り方、受け方、そして送球へのステップを繰り返しやらされた。繁華街から宿舎まで歩いて20～30分の道のりは、気づけば1時間以上もかかっていた。

「ヤスがうまくなればいいんだ。オレたちは、通行人に変な目で見られながら歩いた。文句があれば、ヤスに言えよ」

山本選手、中日ドラゴンズへようこそ。暗闇でのレッスンは今も忘れていません。井端さん仕込みの技術を発揮してください。美技を披露してくれれば、気恥ずかしかった約6年前の気持ちも晴れます。

川本　光憲