キャンプ序盤、沖縄には昇竜館の平沼館長の姿があった。「ずっと接していないと分からないこともあるから」と主に寮生の様子を見に来ていた。プロ入り後から毎年経験してきたキャンプで思い出に残る年を尋ねると、「刺激的だったのは1995年かな」と振り返ってくれた。

当時はロッテに所属し、監督はボビー・バレンタイン。場所は米アリゾナ州ピオリアだった。とある日の練習中、急に球場近くにヘリが到着。降りてきたのは、引退したばかりのノーラン・ライアン。旧知の仲だった指揮官が呼び寄せた特別コーチから投球の指導だけでなく、球数の管理や休息の重要性を説かれ、「視野が広がったよね」と話してくれた。

一度名古屋へ戻り、再び沖縄入りする。「若い選手にはいろんな発見をしてほしいね」。寮生に向けて、温かいまなざしを送っている。

長森　謙介