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【コロナ対策】新聞で正確な情報を! 謎解きコロナウイルス①「なぜクラスター対策」

    • 2020年04月10日(金)
    • いいね新聞生活

「連鎖を断つ」に注力

目にも、光学顕微鏡にも見えない小さなウイルスに世界がおびえている。新型コロナウイルスは、性質も治療法も分からないことだらけ。一方で世界の科学者が謎の解明に立ち上がっている。新型ウイルスについて分かってきたことを連載で紹介する。初回は「クラスター対策」をおさらいし、今後の見通しを探る。(森耕一)

「東京の患者数の増加は、感染爆発が起こった欧州に近い。非常に憂慮している」。今月1日、政府の新型コロナウイルス対策専門家会議の記者会見。3月下旬からの感染急増に、患者数の予測を担う北海道大の西浦博教授が危機感をあらわにした。

潜む感染

新型ウイルスは感染者の八割が軽症や無症状のため、全感染者を見つけて隔離する感染症対策の王道をとれない。このため西浦教授らは、患者がどういう状況で増えているか分析し、新型ウイルスに合った感染者の減らし方を探ってきた。

初期の感染者110人を対象にした調査では、80人以上が誰にもうつしてない一方、屋形船のような閉鎖空間では、1人が周囲の10人以上にうつす例があった。専門家会議は、1ヵ所で5人以上に感染が生じた集団を「クラスター」と命名。「1人から10人に感染し、その10人の1人が別の場所でさらに10人にうつす」という、閉鎖空間でのクラスターの連鎖で拡大が起きると結論づけた。

2020年2月25日に厚生労働省は「クラスター対策班」を設置し、連鎖を断つことに注力。クラスター発生を察知し、その場にいた接触者を調べ出して検査と自宅待機の要請を進めた。同時に政府は「この2週間が重要」と、国民に密閉・密集空間を避ける活動自粛を求めた。

消えた楽観

感染症は、1人の感染者がうつす平均人数が1人未満であればいずれ消えるが、1人より多くにうつせば広がる。1人が何人にうつしたかを示す「実効再生産数」は2月中旬に国内で1を超え、放置すれば感染爆発(オーバーシュート)につながる状態だったのが、3月上旬には1前後まで低下した。

1週間の自粛期間の成果を検討する3月19日の専門家会議の数日前まで、メンバーからは「いいデータ。第一波は抑え込めた」と楽観論が出て、感染の少ない地域から自粛を緩める検討がされた。

だが会議直前、再生産数が上昇に転じた。欧州で感染爆発が起き、3月11日に世界保健機関(WHO)がパンデミック(世界的大流行)を宣言。19日の記者会見で西浦教授は「欧米からの感染者は、中国と比べものにならないレベルで日本に来る」と警鐘を鳴らした。

予測を裏付けるように、帰国者などの感染が急増。先月下旬の東京では再生産数が1.7にまで上昇した。欧州では再生産数が2.5程度の状態が続き、数日ごとに患者が倍々と増える感染爆発が生じた。日本も爆発か、再生産数を1に近づけられるかのぎりぎりのところにいる。

医療崩壊

感染増加が続けば、感染症専門の病床は足りなくなり、一般病院での患者収容が必要になる。院内感染で閉鎖を余儀なくされる病院が出ていることも追い打ちをかける。

国内に約23,000台ある人工呼吸器で対処しきれず、救える命も救えなくなる医療崩壊につながる恐れもある。

東京大の武藤香織教授(医療社会学)は「人口呼吸器をつける人を選別する事態も起こりうる。判断を医療者だけに押しつけるのは酷」と、社会全体で治療の優先順位について議論するよう求める。

一方、現在の第二波を抑え込めたとしても、これから雨期を迎える東南アジアや冬になる南半球で患者が増え、新たに日本に入ってくる可能性は高い。感染者数は第三波、第四波と波打つように推移する恐れがある。

薬やワクチンができれば波は小さくなるが、東京医科大の浜田篤郎教授(渡航医学)は「ワクチン完成まで2年程度は感染が続く」とみる。自粛を年単位で続ける必要があり、すでに「コロナ疲れ」が叫ばれる中で、持続可能な自粛策も求められている。

(2020年4月7日付中日新聞夕刊より)※この記事は、中日新聞社の許諾を得て転載しています。
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