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【コロナ対策】新聞で正確な情報を!謎解きコロナウイルス③「感染と増殖」

    • 2020年04月29日(水)
    • いいね新聞生活

人の細胞を乗っ取る

新型コロナウイルスなどのウイルスは、私たちの体に入ると、細胞を乗っ取って自分をコピーし数を増やしていく。自力ではなく、宿主(乗っ取りに利用する動物)の力を巧妙に借りる仕組みで、自らの遺伝子を拡散することに成功している。(森耕一)

細菌との違いは

「ウイルスを除菌します」。これ、実は間違い。ウイルスは大腸菌などの細菌ではない。生物とさえ言えない。

生物は、(1)細胞からできている。(2)栄養を取り込んで生きるためのエネルギーを作り出す。(3)自分を自力で複製できる。の3つの性質を持つ。自活して増えられるのが生物だ。

サルモネラ菌のような単細胞の細菌でも、細胞内のさまざまな器官が働いてエネルギーを作り増殖する。一方、ウイルスは、タンパク質の殻の中に遺伝子のDNAかRNAがあるだけ。極めて単純で、自分でエネルギーも作れず増殖もできない。生物を利用するしかない。

ウイルスには、さまざまな形がある。エボラウイルスは細長い。正二十面体や楕円形のウイルスも。コロナウイルスは周囲に「スパイクタンパク質」という突起を持ち、王冠や太陽の周囲のコロナのようなので、この名前が付いた。

ウイルスは自分では何もできないので動物に寄生する。コロナウイルスの場合、スパイクタンパク質が、のどや肺などの表面の細胞にくっつくことで侵入を開始する。細胞膜とウイルスの殻が一体化し、ウイルスは細胞内部に遺伝子のRNAを注入する。

RNAは細胞の器官を乗っ取って、ウイルスのRNAなどの部品を大量に合成する。これらを組み立てて子孫のウイルスを作り、子孫のウイルスは細胞膜を壊して外に飛び出す。乗っ取られた細胞は「ウイルス生産工場」にされてしまうのだ。

いままでに作られた抗ウイルス薬は、細胞への侵入やRNAの合成を妨害する働きがあることから、コロナでも効かないか調べている。

コピーミス発生

一方で、乗っ取った動物を殺してしまうと子孫を残せないため、ウイルスは本来、宿主の中では悪さをせずに存在している。新型ウイルスも元々寄生していたとみられるコウモリの体内では安定して存在していた。

だが、ウイルスは12時間程度で世代交代するため、遺伝子をコピーミスして変異が起こる頻度が高い。今回の新型ウイルスも変異して人間に感染するようになってしまった。すると、本来の宿主とは違ってうまく共存できず病気を引き起こす。

人間に感染するコロナウイルスは4種類が知られ、風邪の10~15%はコロナウイルスが原因だ。症状が重くないこともあり、日本獣医生命科学大の氏家誠准教授は「研究者の間で、コロナはメジャーなウイルスではなかった」と明かす。

だが2002年に、SARS(重症急性呼吸器症候群)を引き起こす毒性の強いコロナウイルスが出現、2012年にはMERS(中東呼吸器症候群)も現れた。今回の新型で、人に感染するコロナウイルスは計七種類となった。

新型コロナウイルスは、SARSのウイルスと遺伝子の8割を共有し、感染の仕方も似ているが、症状はSARSほどは強くないケースが多い。感染すると、気道の細胞を壊すために風邪のような症状となる。千里金蘭大の白木公康教授は「のどだけに感染し、重い症状を起こさないケースがあるようだ」と指摘。このため軽症のままウイルスを広げてしまうという。

一方で、ウイルスが肺まで広がった肺炎では、ウイルスを倒そうとする私たち自身の免疫が強く働きすぎて、炎症をひどくする大きな原因になるという。ただ、未知の部分が多く、複数の専門家が「本当のところ、どう病気が起こっているかも分からない」と話す。

重症化すると、人口呼吸器や人工心肺装置(ECMO)で弱った肺を支援し、炎症を抑えたり細菌の二次感染を防いだりする薬を投与する対症療法が基本。治療に使える抗ウイルス薬が確定するまで、この状況は変わりそうにない。

(2020年4月21日付中日新聞夕刊より)※この記事は、中日新聞社の許諾を得て転載しています。
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