マイティラインとは

不安を除くために

    • 2020年05月15日(金)
    • いいね新聞生活

世の中は今、新型コロナウイルスに対する不安が蔓延し、新聞紙上でも「不安」の文字を見ない日はありません。不安と新型コロナウイルスが共通するのは、いずれも目には見えないことですが、コロナウイルスの形状については、皆さんも電子顕微鏡の画像写真を目にしてご存じのことでしょう。太陽の王冠(コロナ)に似た形をしており、名前もそれに由来することを-。

一方、「不安」というものは、電子顕微鏡でも見ることができません。正体がないのです。では、正体がないものを取り除いたり、減らしたりするにはどうすればいいのか。私は「相手を知る」ことだと考えています。つまり、「正しい情報を得る」ということです。

新型コロナに対する一番の不安は、自分や家族が感染するかもしれない、ということでしょう。陽性が判明し、重症になったら、志村けんさんや岡江久美子さんのように死の危険にさらされる。そして周囲や職場にかかる迷惑、世間の差別的扱い、学費や休業に伴う経済的損失…。考えだしたら切りがありません。

でも、むやみに不安がることは、自身の健康や精神にストレスを与え、免疫力を落とし、感染を招きやすい要因をつくってしまいます。

本欄に転載されている新型コロナの感染メカニズムなどを説明した中日新聞夕刊の科学記事は、「敵の素性」を知る上で役に立ちます。同紙はより多くの読者に読んでもらおうと、2020年5月11日付から夕刊科学面を朝刊に移して掲載を始めました。

また、2020年5月8日付の朝刊では、特設面「知る防ぐ新型コロナ」で、世界や国内の感染状況と推移を地図やグラフで示しています。それらにより、私自身、住んでいる岐阜県や通勤する愛知県の感染実態が分かり、自分を取り巻く状況を客観的に把握することができました。

欧米はじめ主要16カ国の感染者数の推移をグラフで見ると、日本や韓国は最低位にあり、感染拡大がかなり抑制されていることは一目瞭然です。これに対し、米国の3月下旬以降の爆発的な感染拡大といったら…。

日本だけではないのでしょうが、巷では感染者に対する中傷が飛び交ったり、治療に当たる医療従事者の子どもが保育園の登園を拒まれたり、といった差別が生じているそうです。 名古屋外国語大学長の亀山郁夫さんは、2020年4月29日付中日新聞「学ぶ」面で、コロナ禍において大学生が意識すべきこととして、こんなメッセージを発しています。「基礎的な教養を手掛かりに、状況を冷静に見つめることができれば、恐怖が差別に変わることはないのです」-。「教養」「情報」に置き換えても、同じことが言えると思います。(有)