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【コロナ対策】新聞で正確な情報を!コロナ深知り!②「変化するウイルス」

    • 2020年05月25日(月)
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毒性も変わる可能性

新型コロナウイルスは、5カ月ほどの間に、世界の隅々に広がりました。今この瞬間も、ウイルスは絶えず自らをコピーして増殖しています。ときどき遺伝子のコピーミスが起こり、毒性などの性質が変わってしまうことも。今のところ、大きな変化は起こっていないようですが、今後、強毒化する可能性はないとは言い切れません。(森耕一)

薬やワクチン 効き目に影響

赤、水色、黄色-。何千もの点が散らばり、線で結ばれています。きれいな屋根の家々の上を飛ぶ航空写真のような図は、国立感染症研究所が先月発表した、新型コロナウイルスの変化の広がりを示す「地図」です。

研究はクルーズ船ダイヤモンド・プリンセスを含む国内の感染者の560人から採取したウイルスの遺伝子を解析し、世界各国の研究機関が解析した4500人の感染者のウイルス遺伝子のデータも活用しました。

経由地

地図では、遺伝情報が変化する前後の「親子」関係にあたるウイルスを持つ感染者同士を線で結びます。地図上で近いほど近縁の、遠いほど変化の大きいウイルスを持つ感染者です。

そして、ヨーロッパの感染者は水色、日本は赤、中国は青、北米は黄色と、国別に色を付けます。

地図の下側中央の武漢の感染集団の近くは、もとのウイルスに近い型です。その後、さまざまに変化しつつ世界へ広がりました。ヨーロッパの中でも変化し、アメリカでは東海岸と西海岸では別の地域からやってきたウイルスが広がったこともわかります。

国内では、2月には武漢に近いウイルスが多く、3月後半以降にはヨーロッパ経由が中心です。また、ダイヤモンド・プリンセス内で広がったタイプは、船外では広がらなかったようです。

新型ウイルスは症状が出ない人が多く、感染がどう広がったかの追跡が難しいのですが、遺伝子からつながりが見えてきます。感染研では「初期の中国やクルーズ船からの感染拡大を防げた」とのアピールにも活用しています。

RNA

遺伝子というと思い浮かぶのはDNAですが、コロナウイルスの遺伝物質はDNAではなくRNAという物質です。DNAと似ているのですが、やや不安定な構造です。

コロナウイルスは、人間に感染し細胞を乗っ取ると、RNAをコピーしてどんどん増やします。RNAは不安定なこともあり、RNAウイルスではコピーミスによる突然変異が起きやすいのです。

設計図のRNAが変わるので、時には毒性も変化します。新型コロナウイルスも、もとは人に感染しなかったのに、変異して感染力を持ったと考えられます。

実は、エボラ出血熱、ポリオ、エイズなど毒性の強い病気のウイルスにはRNAを遺伝物質とするものが多いのです。中でも、インフルエンザウイルスは、24時間で100万倍にも増殖する速さに加えて、ウイルス表面の構造の変化も起きやすく、絶えず特徴が変化しています。

このためワクチンが効きにくく、繰り返し感染する可能性も高くなります。これまでも急に毒性の高い新型に変異して、1918年のスペイン風邪など、何度もパンデミック(世界的大流行)を起こしてきました。

監視

新型コロナウイルスのRNAも、年間で25ヵ所ほど変化しますが、インフルエンザと比べると変化は少ないようです。イギリスの研究グループは「新型コロナウイルスにはすでに200種の変異タイプがあるが、感染力や致死性には大きな変化は見られない」と発表しています。

毒性が強すぎて感染した人や動物を殺してしまうと、長時間存在できないため、ウイルスや細菌などは、毒性を抑えて人や動物と穏やかに共存できる方向に「進化」する、とみる理論もあります。

ただ今後、強い毒性に変化する可能性がないわけではありません。変異によってウイルスの形が変われば、薬やワクチンの効き目も変わってくるため、世界中の研究者が観察を続けています。

(令和2年5月18日付中日新聞朝刊より)※この記事は、中日新聞社の許諾を得て転載しています。
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