【コロナ対策】新聞で正確な情報を!コロナとAI ビッグデータの挑戦③「ツイッターでみる自粛と恐怖」
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- 2020年07月06日(月)
- いいね新聞生活
一層身近な問題 ツイート増える
短文投稿サイトのツイッターには、人々が今どんなことを思っているかが、率直に表現されています。膨大なデータを分析すると、関心や感情の移り変わりが分かります。新型コロナウイルスの感染拡大から半年間の推移を、つぶやきから振り返ってみましょう。(吉田薫)
論争
日本では強制力を伴わない自粛によって、ウイルス感染の拡大がある程度、防止できたといわれます。半面、街は閑散となり、旅行、飲食、運輸、娯楽などの業界は大打撃を受けました。ツイッター上でも、自粛の是非を巡って論争が起きました。
NTTデータは、キーワード「自粛」に注目し、億単位のツイートを集計しました。
「自粛すべきだ」というツイートは、2020年2月18日に急増しました。前日に東京マラソンの一般参加が中止となり、多くの参加予定者がショックを受けました。2020年3月8日にも増えました。この日は、結婚式延期という投稿が話題になり、それに触発されたとみられます。東京五輪の延期にも敏感に反応しました。
中国の習近平国家主席の訪日延期や米国株価の暴落など政治経済の大ニュースよりも、身近な出来事の方が自粛の必要性への共感をもたらしたようです。
ツイート数でなく、発言者の数でみると、2020年3月末から4月中旬まで、「自粛すべきだ」が「すべきでない」を圧倒していました。とくに2020年4月7日に大都市圏で緊急事態宣言が出て、「人との接触を8割減らしてほしい」と伝えられると、自粛賛成の比率が最高になりました。
一方、自粛反対のツイートは2020年4月末から増えてきました。NTTデータは「緊急事態宣言が解除できないという見通しが流れ、いつまでやるのかと、不安が高まってきた」とみます。反対が目立って増えたのは、連休が終わった2020年5月7日でした。千葉市長の「メディアが、少数の自粛を守らない人を過剰に取り上げている」との発言がきっかけだったようです。
ただ発言者の数でみると、2020年5月に入っても「自粛すべきだ」という人の方が多く、逆転したのは2020年6月に入ってからでした。
ピーク 志村さんの死 影響大きく
鳥海不二夫・東大准教授は、ツイッターから恐怖の気持ちの推移を分析しています。
「人々の感情に対し、最も大きな影響があった出来事は、志村けんさんの死だった」と鳥海さんはみています。
「初期は、恐怖のつぶやきが多かった。恐怖の比率が最も高かったのは2020年1月の段階。そのころは『こわい』と感じた人だけがツイートしていたからでしょう。2020年2月、一斉休校になったころになると、コロナウイルスは一層身近な問題になり、ツイートも増えました。2020年3月30日、志村さんの死亡が報道されると恐怖のツイートがさらに増えたのです」
2020年5月後半になると、ツイートも落ち着きを見せてきました。「いつになったら終わるのか」「ストレスを感じる」という趣旨が多くなりました。
こうした恐怖の期間は、自粛すべきだという人が多かった時期と重なっています。
課題
分析は、今後どんな方向に進むのでしょうか。
NTTデータは、ツイッターの集計を都道府県単位でも行って、部分的に公開しています。
「全体の集計では、都市部の影響力が大きくなってしまう。地域ごとに特色があり、それぞれ関心も異なっている。エリアを限って、今の住民の思いを拾い、自治体などに聞いてもらうことが可能になる」と同社では話しています。
またデマ対策が課題です。ツイッターの方も、デマ発見スタッフの増強に加え、デマを発見する人工知能(AI)を導入しています。悪意のあるデマだけではなく、善意で誤った情報を拡散してしまう場合もあります。ただコロナウイルスに関しては、本来信頼できるはずの国際機関や政府、ときには国家元首の流す情報が誤っている場合もありますからやっかいです。
流れてくるツイートを丸のみにせず、リツイートも慎重にしたいものです。
(2020年6月29日付中日新聞朝刊より)※この記事は、中日新聞社の許諾を得て転載しています。
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