マイティラインとは

紙の良さ Webの良さ(「中日新聞」を読んで)

    • 2020年07月10日(金)
    • いいね新聞生活

先月、本紙のWebサイトが「中日新聞Web」としてリニューアルしたことをご存じだろうか。スマホの普及で情報の入手手段がネットへ移る中で、新聞各社もWeb版(電子版)に力を入れている。

新聞については、私は、“紙派”だ。紙の新聞にはWeb版にはない良さがある。それは記事の扱いの軽重が一目でわかること。紙の新聞は記事の重要度に合わせて掲載場所や見出しの大きさ、リードや写真の有無、行数などを変えている。極端な話、文字を読まずとも、新聞社がどの記事を重要と思っているかすぐにわかる。Web版だと基本的にどの記事もほぼ扱いは並列になる。

記事の重要度に合わせて紙面を作るのは整理部の仕事だ。表には出ないがここが紙の新聞の出来を左右する。私は新聞を5紙購読しているが、世辞ではなく、本紙の紙面が一番出来がいいと思っている。

一方でWeb版にも紙にはない良さがある。1つは紙面制約が少ないことだ。Web版では無理に文字数を削らなくていい。中日新聞Webの経済ニュースのメニューに「決算会見録」というコーナーがある。ここは決算発表での企業トップの話をほぼ全文掲載している。これがなかなか面白いのだが、紙ではとても全文を載せられない。

Web版のもう一つの良さは、新聞社が持つ膨大な記事ストックを使えることだ。あるニュースがどういう経緯でこうなったのかは、ある日の記事からだけではわからない、しかし過去の記事をあわせて読めばわかることが多い。Web内サービス「中日プラス」の会員になれば過去1カ月(有料会員は1年)の記事を検索して読むことができる。

紙の新聞とWeb版はそれぞれに良さがあり、役割も異なる。例えば、世の中で重要とされていることを効率的に知るとか、教育に使うなら、やはり紙の新聞だ。ただWeb版をうまく使うことで、さらに紙を生かせるようになる。本紙から宣伝を頼まれてはいないが、紙の購読者は無料なので、この機会に会員登録をお勧めしたい。(名古屋学院大学教授・江口忍)

(2020年6月28日付中日新聞朝刊より) ※この記事は、中日新聞社の許諾を得て転載しています。