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元日の新聞

    • 2019年02月08日(金)
    • いいね新聞生活

「平成最後」の1月が終わり、「平成最後」の2月に入りました。元日の朝、私は自宅の最寄りのコンビニに出掛け、一般紙2紙と経済紙を買い求めました。「一年で最初の買い物は新聞で」という毎年の自分なりのこだわりです。ただ、わが家で取っている一般紙2紙を含め、私が元日の新聞各紙に目を通すのは、単なるこだわりからではありません。新聞はその日に起きたニュースを報じるのが第一の使命です。が、元日の新聞は年頭だけに、今年はどんな年になるのか、社会はどう変化していくのか…そういった未来予測を各紙とも渾身の力を込めて展開します。それらは、自分なりの時代認識を持つ手引きとなるのです。

今年、複数の新聞が取り上げたテーマは、「AI」(人工知能)に代表される技術革新でした。日本経済新聞は「Tech2050 新幸福論」という連載で、30年後の社会を予測していました。同紙が20~40代の若手研究者に行ったアンケートによれば、「2050年までにAIが人間の知性を超える」と答えた研究者は、回答者200人のうち9割に及んだそうです。この30年間のテクノロジーの急速な変化は、今後30年間でさらに加速し、「50年までの技術進化で人類は転換期を迎える」(山極寿一京都大総長)というのです。人類はどのように転換するのか、にわかに想像がつきません。

朝日新聞は、京都大と日立製作所がAIを使って予測した2050年の日本の姿の「未来シナリオ」を紹介。日本が持続可能であるためのシナリオは、現在のような「一極集中型」ではなく、地方と都市のバランスが取れた「地方分散型」であると指摘していました。

中日新聞は、AIによる将棋ソフトと対戦して勝った経験のある豊島将之王位・棋聖(28)と、数学や哲学を基盤に「独立研究者」として活躍する森田真生さん(33)との新春対談を掲載しました。「AIとの付き合い方」について森田さんは「要するに、僕らがどう機械と関わるか次第です。同じ尺度で機械と人間の優劣を語るのではなく、彼らからどう刺激をもらうかを考えるべきです」と語ります。

毎日新聞は社説で、「強力なAIは利用者の消費性向を知り尽くそうとする」とし、「これまで私たちはAIに無防備すぎたかもしれない」と、AI社会の危うさに警鐘を鳴らしました。

かつて、新しい技術が登場すると「夢の〇〇」という枕言葉がついたものです。AIにはどこか人間社会を脅かすような恐れや不安がつきまとい、純粋に「夢のAI」とは呼べないような気もします。その一方で、AIは人々の暮らしに計り知れない恩恵をもたらしてくれるかもしれません。元日の紙面は、われわれが「情報技術革命」真っただ中の時代に生きていることを強く自覚させてくれるとともに、嵐の中で難破船とならないための羅針盤のようにも感じました。(有)