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【コロナ対策】新聞で正確な情報を!/コロナ深知り!㉑「ウイルス何個で感染するの?」

    • 2021年08月09日(月)
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人での実験英で進行中

「新型コロナウイルスは、どれくらいの数が体内に入れば感染するのでしょうか?」との質問が読者から寄せられました。今のところウイルス何個ぐらいで感染する、と数字を出すのは難しいようですが、英国では、その数を調べるため、実際に人に感染させてみる実験が既に始まっています。(増井のぞみ)

ノロは数個で発症感染力コロナが上

質問者の東京都三鷹市の男性(42)は「ノロウイルスはわずか十~百個で感染する」と知り、コロナはどうなのだろうと考えたといいます。このノロウイルスの感染個数は厚生労働省のホームページに載っています。資料を作った国立医薬品食品衛生研究所(川崎市)の上間匡・第四室長が、参考にした海外の論文の一つを教えてくれました。

飲んで

米国ベイラー医科大の研究チームが2008年に発表した論文です。健康な大人16人がノロウイルスの溶液を飲む実験をした結果、わずか数個から数十個分を飲んだだけで下痢や嘔吐などの症状が表れました。人で実験したことに驚きです。

コロナウイルスはどうなのでしょう。複数のウイルス学者に尋ねたところ「やはり人で感染実験をしない限り分からない」といいます。

英国では今春、ボランティアを対象に世界初のコロナの感染実験が始まりました。英国政府の支援を受けた英大学インペリアル・カレッジ・ロンドンなどが、健康な若者最大90人の鼻にウイルス入り飛沫を吹き付け、感染する最小量がどの程度か調べます。実験の受託会社は7月、参加者を最大20人追加すると発表し「研究データは新型コロナウイルスの貴重な情報を既に提供している」と述べました。

安全性

人での実験について環境ウイルス学者は「感染リスクの計算に役立つ。のどから手が出るほどほしいデータ」、薬学者は「感染の仕組みの解明やマスクの性能評価にも役立つ研究。若者なら重症化リスクは低い」と期待します。実験では治療薬レムデシビルを準備します。

しかし、感染症に詳しい森島恒雄・愛知医科大客員教授は「レムデシビルは特効薬というほど有効でない。健康な若者でもコロナで重症化したり、後遺症が続いたりするのに、参加者の安全を確実に守れるか」と問題点を指摘します。

ノロウイルスは、非常に少ない数で感染します。しかし、単にその数だけで全体の感染力が決まるわけではありません。

コロナは鼻やのど、肺で増える呼吸器感染症、ノロは腸内で増える腸管感染症です。コロナは呼気やせき、くしゃみに含まれるので、便や吐いた物に含まれるノロより日常的に接触しやすいと考えられます。上間さんは「感染者と同じ空間にいるだけでも飛沫感染するという点では、コロナの方がノロより感染力が強いと考えることもできる」と話します。

変異株

コロナのうち感染力が強い変異株(デルタ株)はどうでしょうか。サル細胞に感染実験をする上野貴将・熊本大教授は「従来株が細胞にくっつく部分にデルタ株特有の変異を入れると、細胞にくっつき入り込む効率が良くなり、半分ほどの数で感染が成立した。だから、距離を置く、三密を避けるなど今まで以上に注意する必要がある」と語ります。

さらに英科学誌「ネイチャー」は7月、中国の研究チームの成果として、デルタ株感染者は従来株の感染者と比べ、最初に感染が分かった時のウイルス量が平均約1,000倍、最大で1,260倍と伝えました。体内のウイルスが多いと、排出も多くなると考えられます。

吸い込んで体内に入ったウイルスの数と、症状の重さに関係はあるのでしょうか。コロナに詳しい忽那賢志・大阪大教授は「動物実験では、接したウイルス量が多いほど症状が重くなる傾向が示された。人も感染実験で分かるかもしれない」と話します。「まず周りに広がるウイルスの量を減らし感染を防ぐことが大事。ワクチン接種を進めるとともに、接種後もマスク着用や手洗いを続けてほしい」と呼び掛けます。

(令和3年8月2日付中日新聞朝刊より)※この記事は、中日新聞社の許諾を得て転載しています。

※都市部中心にデルタ株が猛威を奮い感染者が急拡大しています。日々の状況は新聞でご確認いただきながら、くれぐれも感染予防に努めて下さい。