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「令和」の号外

    • 2019年05月06日(月)
    • いいね新聞生活

平成天皇が退位され、5月1日に新天皇が即位されました。それに先立つ4月1日には改元により新元号「令和」が発表されました。改元は30年ぶりですし、天皇の退位は江戸時代後期の光格天皇以来202年ぶり、憲政史上初ということですから、私たちはまさに歴史の節目に立ち会ったことになります。

新聞社は震災や大きな事件事故、日本人のノーベル賞受賞といった特別なニュースが起きた場合、号外を発行します。中日新聞も新元号が発表された4月1日、平成天皇退位の4月30日、新天皇即位の5月1日と相次いで号外を発行し、東海地方の街頭などで配布しました。「令和」発表の際は、号外を求める人たちが殺到し、奪い合いになった所もあったようです。

中日新聞の読者は、4月2日の朝刊を手にして驚かれたのではないかと思います。1面の題字下に「号外」とあり、「令和」の文字と、神妙な顔つきで新元号が書かれた額を掲げる菅義偉官房長官の写真。「なぜ号外が 」「号外にしては厚いなあ」。怪訝に思いながら1面をめくった私は、思わず膝を打ちました。新聞全体を包むラッピングは近年、広告や企画特集で用いられる手法ですが、「ラッピング号外」は前代未聞です。これは読者に喜ばれるに違いない。案の定、反響は大きく、「号外が欲しかったのだが、足が悪くてあきらめていた。本当にうれしい」「今日ほど新聞を取っていて良かったと思ったことはない」などと感謝の声が次々と本社に寄せられました。社内では編集を中心にだいぶ前からアイデアを温め、準備をしていたようです。

退位と即位の号外は、いずれも翌日の5月1日と2日の朝刊の中面に挟まれ、各戸配布されました。街頭で配った号外とは日付が一日違いますが、それ以外は見出しも記事も写真も一緒です。読者の皆さんは、自宅にいながら記念すべき3種類の号外を手にできたことでしょう。

かつて世の中で起きたことを伝える主役は新聞であり、その速報版が号外だったのですが、今やテレビやラジオはおろか、ネットで発生直後のニュースを誰もがどこにいても入手できる時代です。それでも今回、号外を大勢の人が歓迎し、欲したということは、速報性とは別の存在意義があるにほかなりません。それこそ、自分が歴史の節目に立ち会えたことを示す証拠、新聞の大きな特徴である記録性であることを「令和」の号外が示してくれました。(有)