音楽家の坂本龍一さんが亡くなった。神宮外苑の再開発計画に反対の声を上げていたのは記憶に新しい。神宮外苑一帯はイチョウ並木をはじめ東京を代表するエリアの一つ。再開発計画では、神宮球場も建て直され、商業施設が入る大型ビルも建設されるという。樹木が大量伐採される懸念があり、大きく景観は変わることだろう。

確かに神宮球場は老朽化が進んでいる。ただ、この外観や木々の緑を見て「神宮に来た」と思う人も多いはず。その場所や建物に触れることで想起される記憶や思い出がある。リノベーションで利便性を向上させながら、一帯の風景を保つことはできないだろうか。長い年月を通じて築き上げてきたものが目の前の「損得」で失われてしまうのなら残念でならない。

「変えなければいけないこと」と「変えてはいけないもの」。これを間違えてはならない。坂本さんはそのことを問うているように思う。

土屋　善文