【レポート】萩焼 十三代三輪休雪 トーク・ワークショップ「大地を斬る」
-
- 2024年05月05日(日)
- イベント
2024年4月13日(土)、多治見市のギャラリーヴォイスで萩焼の名門・不走庵三輪窯(ふそうあんみわがま)の十三代三輪休雪(みわきゅうせつ)さんが、「大地を斬る」と題したトーク&ワークショップを行いました。
当日、会場は熱心な聴衆者で満席となりました。
第1部は、三輪休雪さんの制作動画と写真をスクリーンで見ながら、岐阜県現代陶芸美術館の石﨑泰之館長が聞き手となり進行。
その中で「休雪白(きゅうせつじろ)」と呼ばれる釉薬(ゆうやく)が作られる様子が紹介されました。約3000坪の棚田の稲藁からできる釉薬は、バケツにせいぜい20~30杯。防府市(ほうふし)で取れる白い粘土の大道土(だいどうつち)、萩の沖合にある見島(みしま)の赤土、金峯土(みたけつち)を合わせた素地土(きじつち)を使い、休雪さんの作品は作られます。
スクリーンをはさんで右が三輪休雪さん、左が石﨑さん
山口県萩市にある三輪窯は、1663年に毛利藩の御用窯として始まり、そこに生まれた休雪さんは、米国サンフランシスコへ5年間留学しました。帰国後デビュー作となる、「DEAD END(デッドエンド)」は、会場の山口県立美術館に約40トンの生の大道土を敷き詰め、ガードレールを設置し、道路としたところにバイクとジープ車で走り轍(わだち)を作ったもので、40年経った今でも美術館の壁からその土が出てくると言われているそう。その後も轆轤(ろくろ)でひいた巨大な円筒状のものを横にしひび割れた作品、直径約1.5mもある巨大なドーナツ状のものを野焼きした作品など、一貫してスケールの大きな制作を試みてきました。
1984年の初個展「恒久破壊」について、「裂け目や断裂などができるが、土には土の気持ちがあります。人間の考え方に支配されものではなく、土の側に立った見方から制作することをこの頃から考え始めました」と振り返ります。
華道家・中川幸夫さんとのコラボレーション
山口県立萩美術館・浦上記念館の茶室展示
第2部は、茶碗「エル キャピタン」シリーズの実演ワークショップで、土の塊を割木で叩き、錆びた日本刀で斬って造形していく過程が圧倒的な迫力で展開されました。「力が入ると声が出てしまうのが演出じゃないかと言われますが、そうではなく、出てしまうんです」と、息を切らしながら解説しました。
この後サプライズが。この作品を作ってみたい人を募ったところ、最前列に座っていた東京から来た村瀬智子さんがすぐに手を上げ、休雪さんの指導の元、実演されました。愛知県江南市出身で瀬戸があることから、子どもの頃からやきものに親しみがあり、修学旅行で萩へ行ったときに轆轤体験もしたそう。この日は実家の両親とともに参加し、「(土の塊は)ズシっと重かった。緊張していて何を込めて作っていこうかと考えながらでした。母なる大地や女性的なものという気持ちを込めながら制作していくうちに面白くなりました」と話しました。
ワークショップの後は、ギャラリーヴォイス恒例の交流会が開かれ、多治見近辺で制作する陶芸家や、妻・みね江さんの挨拶などがあり、交流を深めた実り多き一日となりました。
右が村瀬さん
ワークショップの様子
三輪休雪さんの作品も展示されている
「エル キャピタン」 2024年 不走庵三輪窯提供
ギャラリーヴォイス「わんの形3」
~三輪休雪さんの作品も展示されています。~
「わん」をキーワードにした器やオブジェ等、作家(約380名)の自由な解釈と発想が生み出す作品を展示します。
さまざまな作品たちが存在感をアピールする展示会をぜひこの機会にご覧ください。
- 会期
- 2024年4月6日(土)~5月26日(日)
- 時間
- 10:00~18:00
- 会場
- 多治見市文化工房ギャラリーヴォイス
(岐阜県多治見市本町5-9-1陶都創造館3階) - 休館日
- 水曜日
- 電話
- 0572-23-9901
- 入場料
- 無料
(Adachi Masako)
月刊紙『マイタウンとうと』編集長。東京都出身。短大卒業後、証券会社で営業、新聞社系出版社で編集を経験。子どもが小さいときは時間で終わる公的機関でパートをし、その後編集復帰。カルチャーもスポーツも何でも興味が湧いたことには直接足を運び、自分の目で見ることを心掛けています。一方、家で過ごすのも大好きで、週末は家から一歩も出たくない気分の日もたびたび…。