【レポート】【岐阜県現代陶芸美術館】「人間国宝 加藤孝造 追悼展」
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- 2024年12月14日(土)
- イベント
昨年、2023年4月に亡くなった陶芸家で重要無形文化財「瀬戸黒」の保持者、人間国宝・加藤孝造の全貌を多彩な約150点で紹介する追悼展が、岐阜県現代陶芸美術館(岐阜県多治見市東町)で開催されています。
加藤孝造は岐阜県瑞浪市生まれ、幼少期より絵を描くことが好きで画家を志すも、岐阜県陶磁器試験場(現・岐阜県セラミックス研究場)に入社。勤務するかたわら、絵画への情熱は冷めることなく、18歳で日展の初入選を成し遂げています。
しかし、試験場の五代加藤幸兵衛場長の助言に従い、陶芸の道へと転向し、荒川豊蔵との出会いを経て、可児市平柴谷に築窯。2010年に重要無形文化財「瀬戸黒」の保持者に認定されました。
2024年11月29日に行われた内覧会で、岐阜県現代陶芸美術館の石﨑泰之館長は「当館で加藤先生の小規模な展覧会はやっていましたが、今回は表現活動の集大成をご覧いただき、詩人のように深く、目に見えない物を表現していることを感じていただければ」と挨拶。
遺族を代表して長男の加藤英人さんは、「父がこの展覧会見たら、またやる気を出してファイトを見せたんじゃないかと思います。目に見えないものを大事にしていました」。
友人のヤマカグループ代表・加藤智子(さとこ)さんは、「60数年のお付き合いの中で、ちっとも変わらないお人柄の先生が大好きでした。個展では、その都度自分で気に入ったものを一つずつ買い求めていました。先生はそれが一番嬉しいとおっしゃっていました」と振り返りつつ、どれを買ったらいいかアドバイスを求めると、「図録の1番を買っときゃぁ」と言われましたと話し、場内は笑いに包まれました。
加藤智子さん
加藤孝造作品のコレクターである丸沼芸術の森の須崎勝茂さんは、「私が30代の頃に知り合い、コレクションを始め現在では320~330点集めました。作家の初期から晩年まで集めるのがコレクターの使命ではないか。また、これからの美濃陶芸の発展のためにお手伝いできると思いお預かりしました」と、コレクションへの思いを語りました。
須崎勝茂さん
村上茂美さんのフルート演奏では、加藤孝造が好きだったというバッハの「G線上のアリア」、「ふるさと」の2曲が披露されました。
展覧会場に足を踏み入れると、画家の回顧展ではと思われるような、加藤が14歳で描いた「リンゴ」という題名の油彩画から、ずらりと絵画が並び、どれも驚くほどレベルの高い作品です。 陶芸における処女作品となる「三彩釉壺」は、上部が張った形に、釉薬が施されセンスの良さを感じます。
《リンゴ》(1949年)
(手前)《三彩釉壺》(1955年)
今展覧会の担当学芸員・立花昭さん(54)は、柿色の作品「鉄釉壺」を前に、「轆轤(ろくろ)がすごく上手く、大きく張った胴体に、口造りは絶妙でこれしかあり得ないという形です。鉄釉はフッ素をかけてマット状にし、試験場にいたテクニックを使っています」。また、「晩年は、やり過ぎないという条件の中でどう表現していくかという作品作りでした。瀬戸黒の加藤孝造と知ってる方も、それ以外のすごい世界があって、最後に行きつくのが瀬戸黒だという流れをご覧ください」と話しました。
《鉄釉壺》(1968年)第5回朝日陶芸展入賞作
2020年撮影 多治見市教育委員会提供
- 会期
- 2024年11月30日(土)~2025年3月16日(日)
- 時間
- 10:00~18:00(入館は17:30まで)
- 会場
- 岐阜県現代陶芸美術館
(岐阜県多治見市東町4-2-5 セラミックパーク美濃内) - 休館日
- 月曜日
(ただし、2025年1月13日(月・祝)、2月24日(月)は開館)、2024年12月29日(日)~2025年1月3日(金)、14日(火)、2月25日(火) - 観覧料
- 一般1,000円、大学生800円、高校生以下無料
- お申込み・お問い合わせ
- 岐阜県現代陶芸美術館ホームページ
0572-28-3100
(Adachi Masako)
月刊紙『マイタウンとうと』編集長。東京都出身。短大卒業後、証券会社で営業、新聞社系出版社で編集を経験。子どもが小さいときは時間で終わる公的機関でパートをし、その後編集復帰。カルチャーもスポーツも何でも興味が湧いたことには直接足を運び、自分の目で見ることを心掛けています。一方、家で過ごすのも大好きで、週末は家から一歩も出たくない気分の日もたびたび…。