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「読解力」急落

    • 2019年12月14日(土)
    • いいね新聞生活

「日本の読解力 急落15位」「高1読解力 15位に後退」-。12月4日付の朝刊各紙は、経済協力開発機構(OECD)が実施した国際的な学習到達度調査(PISA=ピザ)の2018年の結果をいずれも一面トップで報じました。日本は高校1年生の読解力が、前回2015年調査の8位から大幅に下がってしまい、ショックの大きさが伝わってきました。

この調査は、「数学的応用力」「科学的応用力」「読解力」の3分野について、学校で身につけた知識や能力を実生活でどの程度活用できるかをみるものです。3年に一度実施され、今回はOECD加盟国に非加盟国・地域を含めた79カ国・地域の約60万人の生徒が参加したそうです。

日本は数学的応用力、科学的応用力のいずれも前回より順位を落としたものの、それぞれ6位(前回5位)、5位(同2位)と上位を維持しました。ところが読解力は前回の8位からさらに7つも順位を下げてしまったのです。

今回の読解力テストは、インターネット上で読まれるニュースやブログの記述が引用され、その中から適切な情報を探し出す設問になっています。OECDの幹部は「デジタル世界における読解力に焦点を当てた」とし、「インターネット上の情報は真偽が分かりにくく、答えも一様ではない。複数の出所の情報を比較し、事実か意見かの区別をつけることも求められる」と狙いを説明しています。

中日新聞の記事では、日本の生徒は「文章の質や信ぴょう性を評価し、根拠を示して説明する問題の正答率が特に低く、情報を見極めて自分の考えを表現する力の不足が浮かんだ」とテスト結果を分析しています。

情報を入手する媒体も情報量も限られていたアナログ世代に比べ、ネット全盛時代に生まれ育ち、日々無尽蔵の情報にさらされている若い世代にとって、情報の質を見極め、取捨選択する力を身につけるのは容易ではありません。

調査では各国の傾向として、本をよく読む生徒が高い読解力を示しました。日本では、小説やフィクションを月数回以上読む生徒の読解力の平均得点が、そうでない生徒より45点高く、新聞を同様の頻度で読む生徒は33点、漫画では29点、そうでない生徒の平均得点を上回ったそうです。

活字と接触する機会の多い生徒が高い読解力を示したのは当然でしょうが、中でも小説やフィクションを読む生徒とそうでない生徒との得点差が最も大きかったのは興味深い結果です。小説などを読むことで場面をイメージする力、想像力が養われ、それが情報を理解し、評価する力にもつながっているのでしょう。

中日新聞の社説は記しています。「読解力は、多様な養分を吸収してゆっくり育つ木のような力なのだろう」と。同感です。小手先の教育技術ではなく、子どもに小さいころから活字に触れたり、本を読む習慣をつけさせたりすることこそが、情報をきちんと取捨選択する力をつける近道だと思うのです。(有)