今季は阪神のコーチとしてタテジマに袖を通しているOBの井上一樹さん。現役時代は鮮やかなピンク色のリストバンドがトレードマークだった。

なぜピンクを選んだのか。「一樹＝ピンキー」の愛称から、出身の鹿児島・桜島にちなんだ、などの説があったので本人に聞いたことがある。答えは意外なものだった。

「メーカーの人にいろんな色を用意してもらったんだよ。緑、紫、水色…。その中でピンクに『これだ』と思ったんだよね」

一つ、大きな関門が残っていた。当時の星野監督の目だ。新調したピンクのリストバンドを着けて、恐る恐るその前を通ってみた。何も言われず、「これでいいんだ」とほっとしたという。

かわいらしいリストバンドの裏に、プロの世界を生き抜く術を見た気がした。