岡田、引退かぁ…。思い起こされたことの一つは権藤博さんと会話だった。球界のレジェンドが振り返るのは投手コーチを務めた2017年の第4回ワールド・ベースボール・クラシック（WBC）。ピンチで左腕をマウンドへ送った。

「ストライクが入らなくてね。マウンドにきた（捕手の巨人の）小林から『自信のあるボールは？』と聞かれて、『ありません』って答えたんだよ。投げたのは真っすぐ。それが揺れたんだ。セカンドゴロでゲッツー。あれは印象深いよね」

1次ラウンドのオーストラリア戦（東京ドーム）。5回1死一、二塁で菅野（現・米オリオールズ）からスイッチしてマウンドを任せた。暴投と四球で満塁の窮地。そして、二ゴロ併殺。左腕は血の気の引いた表情でマウンドを降りている。

小林も「一生、忘れられないマウンドへの声掛けでした」と振り返る。現役生活16年。プラスもマイナスも、残したインパクトの大きさは第2の人生を彩るヒントをくれる。お疲れ様でした。

川本光憲