ナショナルズへ移籍した小笠原が初登板で負け投手になった。登見た舞台に立ったのが何よりも尊い。日本で一定の成績を残し、米球団と交渉して、契約を勝ち取り、通訳がいないところからスタートしている。

「表現しきれないぐらい、悔しいです」
登板を終えた左腕から送られてきた文言。心のどこかで、初マウンドを踏んだという達成感があるかなとも思っていたが、そんなことは全くなかった。

登板を控えた左腕は過去を振り返って第1球を投げた。日本から転送された所得税の納税通知書の画像を見た。もちろん、マイナー時代に嫌というほど口にしたハンバーガー生活も思い出した。「パンが嫌いになりそう」。パテを口に放り込むたび動物の餌のように感じていた。

全てのリアルを受け止めて前進する姿は力強い。挑戦する姿勢は美しい。と同時に、凡人記者は「次のチャンスは勝ってほしいなぁ」なんて思う。外野はいつだって勝手なものだ。

川本　光憲